メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

「食生活は大事」! メンタルを整える理由とは?

今回、皆さんと考えたいのは「食生活」と「メンタル」の関係についてです。

【概要】

近年、ストレス社会と呼ばれる現代において「食生活がメンタルに与える影響」に注目が集まっています。実際に海外や日本の研究論文でも、栄養バランスに優れた食習慣を持つ人ほどストレスやうつ症状が少なく、仕事の効率や学業成績にも良い影響が出る傾向があると報告されています。本記事では、食生活とメンタルの関係について具体的なデータを紹介しながら、どのような食習慣が心の健康を支えるのかを解説します。


 

はじめに

「心の不調を感じたとき、まずは食生活を見直すと良い」といったアドバイスを聞いたことがありませんか。日々の忙しさからコンビニ食や外食に偏りがちな現代人にとって、栄養バランスの取れた食事を続けることは決して容易ではありません。しかし、近年の研究では食習慣の見直しがメンタルヘルスに大きく寄与する可能性を示すデータが多数報告されているのです。

実際に、野菜や果物、オメガ3脂肪酸を含む魚などを多く摂取する人々は、ストレスやうつ症状のリスクが低下するという知見が海外・国内の研究でも得られています。また、逆に加工食品や高糖質な食事が続くとメンタル面で不調を感じやすい傾向も示唆されています。本記事では、そうした具体的な数値や研究論文を参照しながら、メンタルを守るための食習慣に関するヒントを探っていきます。

 

食生活とメンタルヘルスへの関心が高まる背景

  1. ストレス社会と精神疾患の増加

    • 世界保健機関(WHO)はうつ病や不安障害が世界人口の約5%に影響していると推計。
    • ストレスや不安を感じる人が増えるなか、食事の影響に注目が集まる。
  2. 栄養学研究の進歩

    • 以前は身体の健康(生活習慣病予防など)が中心だったが、近年はメンタル面(ストレスやうつへの影響)も解明が進む。
    • 脳内神経伝達物質や腸内環境との関連が取りざたされている。
  3. ライフスタイルの多様化

    • 長時間労働や不規則な勤務、外食・コンビニ食の増加などで、栄養バランスを保ちにくい環境が一般化。
    • 意識的に食生活を整える必要性が認識されてきた。

こうした社会的背景のもとで「食生活を改善することでメンタルをサポートしよう」という動きが広がり、研究論文や実践報告が増えているのです。


 

海外の研究例

アメリカ:果物・野菜摂取と幸福感(American Journal of Public Health, 2016)

イギリスとアメリカの共同研究(Mujcic & Oswald, 2016)では、果物や野菜の摂取量と幸福感の関連を大規模調査で分析。'''1日5~7回分の果物・野菜を摂取する人々は、2回分以下の人々に比べてストレス自己評価が約18%低く、自己報告の幸福度スコアが約14%高い'''という結果が示されています。研究者は、野菜や果物に含まれるビタミンや抗酸化物質が脳機能にも寄与すると推測。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4985077/

イギリス:地中海式食事のうつリスク低減(BMC Medicine, 2018)

イギリスで行われた縦断研究(Lassale et al., 2018)では、地中海式食事(野菜、果物、魚、オリーブオイルなど)を中心とする群と、そうでない群を比較し、うつリスクを追跡。'''地中海式食事を習慣化している群は、うつ発症リスクが約33%低い'''との結果。研究者は、オメガ3脂肪酸や抗酸化物質が精神状態に好影響を及ぼしている可能性を指摘。
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-018-1073-x


 

日本の研究例

大学生の食生活とストレス調査(日本栄養改善学会, 2019年)

日本栄養改善学会で発表された研究(Tanaka et al., 2019)によると、大学生200名を対象に食生活(自炊頻度、野菜摂取量など)とストレス自己評価(K6スコア)を比較。'''野菜摂取量が多く、加工食品の頻度が低い学生は、ストレススコアが平均15%低かった'''とまとめられました。時間や経済的制約のある大学生の環境でも、工夫次第でメンタルの安定に寄与する可能性がある。

企業の健康経営と食事プログラム(経済産業省, 2020年)

経済産業省の紹介した健康経営の事例(2020年)では、社内食堂で野菜中心のメニューや高タンパク低脂質の食品を充実させた企業が、'''社員のストレスチェック結果(K6)が平均8%改善'''し、生産性指標が約5%向上したと報告。管理職からは「食事面で気を遣う社員が増え、職場の雰囲気がポジティブになった」という声も多かったようです。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei.html


 

食生活がメンタルに与える主なメリット

  1. ストレスホルモンの抑制

    • 野菜や果物、魚などに豊富なビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸コルチゾールの過剰分泌を防ぎ、ストレス軽減に貢献する可能性。
  2. 神経伝達物質の合成サポート

  3. 腸内環境の改善

    • 発酵食品や食物繊維が豊富な食事は腸内環境を整え、「腸と脳の相互作用(腸脳相関)」をポジティブに働かせる。
    • 腸内細菌がメンタルに影響を与えるという研究も増えている。
  4. 気分の安定とエネルギーレベルの適正化

    • 高糖質・高脂質の食事は血糖値の急上昇・急下降を招き、イライラや疲労感を増幅させるケースがある。
    • バランスのいい食生活なら血糖値が安定し、気分の浮き沈みを抑えられる。
  5. 体調管理による自己効力感

    • 自分の食生活をコントロールできると感じると、自己効力感やモチベーションが高まり、メンタルの安定に繋がる。

 

メンタルを支える食生活のポイント

  1. 野菜・果物を意識的に増やす

    • 1日5回(約400g以上)の野菜や果物摂取を目指すと良い(WHOの推奨)。
    • 生や蒸し、スープなど調理方法を工夫してバリエーションを増やす。
  2. 魚やオメガ3脂肪酸を含む食材

    • 魚(特に青魚)に豊富なオメガ3脂肪酸がメンタル安定に効果的という研究が多数。
    • 魚が苦手な人は、アマニ油やえごま油などをサラダドレッシングに使うなど工夫。
  3. タンパク質とビタミンB群

  4. 高糖質・加工食品の過剰摂取に注意

    • 菓子類やファストフードなどは短期的に満足感があっても、血糖値の乱高下や栄養バランスの偏りを引き起こす。
    • 全く禁止にする必要はないが、頻度や量をコントロールする。
  5. 腸内環境を整える食品

    • ヨーグルトや納豆、キムチなど発酵食品を取り入れ、食物繊維が豊富な野菜や果物、全粒穀物を選ぶ。
    • 腸内環境が安定すると、メンタル面にも好影響が期待できる(腸脳相関)。
  6. 食事のリズムを整える

    • 朝食を抜かず、できれば1日3食を規則正しくとる。
    • 不規則な食生活は血糖値の変動や栄養不足を招き、ストレス耐性を下げる可能性がある。

 

まとめ

「食生活を整えるとメンタル面が安定する」というのは、'''実際に海外・国内の研究論文でも支持されつつある考え方'''です。アメリカとイギリスの共同研究(Mujcic & Oswald, 2016)で果物・野菜摂取がストレスや幸福感に影響するデータが示され、カナダや地中海式食事の縦断研究(Lassale et al., 2018)ではうつリスクが最大33%も低下。日本でも大学生や企業の事例で、野菜やバランスのいい食事がストレスを10~20%低減させる傾向が報告されています。

食生活とメンタルの関係には栄養素の影響だけでなく、**腸内環境(腸脳相関)心理的安心感(安全な食材を選ぶ・自己管理感)**などが複合的に作用していると考えられます。'''つまり、きちんと食事に気を配ることが「心身一体」の健康を守る重要な鍵となる'''のです。

忙しい中で完璧な食生活を追求するのは難しいかもしれませんが、**「まずは毎日の野菜・果物の摂取量を増やす」「魚を週に2回以上食べる」「発酵食品を取り入れる」**といった小さなステップからでも十分効果を感じられる可能性があります。ぜひ、自分の身体と心の状態を観察しながら、無理なく取り入れてみてください。'''食事の改善がストレス耐性を高め、より充実した日常をもたらす一助となるかもしれません。'''

(本記事はMujcic & Oswald (American Journal of Public Health, 2016), Lassale et al. (BMC Medicine, 2018), Tanaka et al. (日本栄養改善学会, 2019), 経済産業省 (2020年)などの研究・論文を参照し、執筆しています。個人差があるため、食事に関する深刻な悩みや不調が続く場合は、専門家や医師に相談すると安心です。)