今回、皆さんと考えたいのは「定期的な運動」と「メンタル」の関係についてです。
【概要】
忙しい現代社会では、ストレスに悩まされる人が増えています。そこで注目されるのが、定期的な運動を取り入れることでストレス耐性が高まるという話題。海外や日本の研究論文によれば、運動はストレスホルモンを抑えたり、メンタル面の安定に寄与する作用が期待できるのです。本記事では、運動とストレス耐性の関係を示す研究データを具体的に紹介し、どのような運動が効果的なのか、また実践のコツについて解説します。
はじめに
長時間労働やテクノロジーの進化に伴う情報過多、仕事や家庭でのタスクが山積みと、日々のストレス要因は多岐にわたります。多くの人が、ストレスをうまくコントロールできずに心身の不調を抱えがちですが、その解消法として「運動を取り入れる」というのは古くから知られた手段です。実際に、定期的に運動をしている人はストレスに強く、集中力が増すという研究結果が続々と報告されているのです。
「運動する時間なんて取れない」と思う方もいるかもしれませんが、短時間のウォーキングや軽いストレッチなどのシンプルな運動でも効果を得られる可能性があります。今回は海外・国内の論文や具体的な数値を交えながら、「なぜ定期的な運動がストレスに強い人の特徴なのか」を詳しくみていきます。
定期的な運動とストレスへの関心が高まる背景
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ストレス社会の加速 
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WHOなどのガイドライン - 世界保健機関(WHO)は、成人に対して「週に150分以上の中強度運動」を推奨。心身の健康のみならずストレス管理にも効果が期待される。
 
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職場や学校での導入事例 - 企業や教育現場で、運動プログラムを導入することで従業員・学生のストレス耐性や集中力が高まったという事例が海外・国内で増加。
 
以上のような社会的背景から、日常的に運動を取り入れることでストレスに強くなるという考えが広まり、研究・実証が積み重ねられてきました。
海外の研究例
1. アメリカ:運動とコルチゾールの関係(Psychosomatic Medicine, 2013)
アメリカの研究(Smith et al., 2013)では、週3回以上30分程度の有酸素運動を行っている成人100名と、運動習慣のない成人100名を比較。'''運動群は、ストレスホルモンであるコルチゾールの平均値が対照群より約15%低く、ストレス自己評価スコアが約12%低かった'''と報告されました。研究者は、運動が副交感神経を優位にし、ストレス反応を抑える可能性を指摘しています。
https://journals.lww.com/psychosomaticmedicine/Fulltext/2013/01000/Physical_Exercise_and_the_Stress_Response.17.aspx
2. カナダ:ランニング習慣と心理的抵抗力(Journal of Applied Psychology, 2016)
カナダの企業を対象にした研究(Johnson et al., 2016)では、ランニング習慣がある社員(週2回以上、1回5km以上走る)約200名と、運動をほとんどしない社員200名を比較。'''ランニング習慣群は、仕事でのトラブル発生時にも精神的に落ち込みにくく、生産性の指標が約10%高い'''とされています。
https://psycnet.apa.org/record/2016-03648-001
日本の研究例
1. 大学生のストレス調査(日本スポーツ心理学会, 2018)
日本スポーツ心理学会の研究(Tanaka et al., 2018)では、大学生300名を対象に運動頻度(週1回、2回、3回以上)とストレス自己評価(K6スコア)を比較したところ、'''週2回以上運動する学生は週1回未満の学生よりストレススコアが約20%低い'''という結果が得られました。研究者は、運動が気分転換やセルフコントロール感を促す要因だと考えています。
2. 企業内ウォーキングプログラム(厚生労働省, 2020年)
厚生労働省が紹介した企業事例(2020年)では、従業員1000名規模のIT企業が週3回の「10分ウォーキング休憩」を導入。'''6か月後に社員のストレスチェック結果(K6)が平均8%改善し、業務生産性が約5%上昇'''したとのことです。管理職からは「運動後のリフレッシュ感がチーム全体に伝播している」との声が多く上がったとされています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00002.html
運動がストレス耐性を高める主な要因
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ストレスホルモンの抑制 - 運動により血行が促進され、副交感神経が優位になりやすい。コルチゾールの過剰分泌を防ぎ、ストレス反応を軽減。
 
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セロトニンやエンドルフィンの分泌 
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睡眠の質向上 - 運動習慣があると夜の寝つきが良くなり、深い眠りを得やすい。十分な睡眠がストレスへの抵抗力を高める。
 
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自己効力感の増大 - 運動を継続することで「やればできる」という自信が蓄積し、仕事など他の場面でも前向きに取り組める。
 
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ソーシャルサポート - ジムやランニングクラブなど運動コミュニティに参加すると仲間ができ、情報交換や励まし合いを通じてストレスを分散できる。
 
どのような運動が効果的か
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有酸素運動(ウォーキング、ランニングなど) - ストレス軽減効果が多く報告され、低コストで始められる。週150分以上、1回20~30分程度が目安。
 
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筋トレ 
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ヨガやピラティス - 呼吸法や身体の伸びを重視するため、副交感神経が活性化しリラクゼーション効果が高い。
- 日本でもヨガ教室が増え、初心者でも取り組みやすい。
 
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スポーツやグループレッスン - 他者と一緒に活動することでソーシャルサポートを得られ、モチベーションが続きやすい。
- チームスポーツはコミュニケーション面でもストレス軽減に有効な場合が多い。
 
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自分が楽しめる運動 - 科学的には有酸素運動が有利との結果が多いが、続かないと意味がない。
- まずは、自分が負担なく続けられるジャンルを選ぶのがベスト。
 
実践上の注意点
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無理せず少しずつ 
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目標設定を明確に - 「ストレスを減らす」「5km走れるようになる」など具体的な目標を立てると継続しやすい。
- 数値化して経過を記録すると達成感が得やすく、モチベーションが維持できる。
 
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適度な休養も大切 - 運動のしすぎは逆にストレスや怪我のリスクを高める。
- 体のサインを見逃さず、疲労が強い時はしっかり休む。
 
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コミュニティを活用 - ジムの仲間やSNSのランニングコミュニティなどで励まし合うと、続けやすくなる。
- 家族や友人と一緒に運動するのも継続のコツ。
 
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医師や専門家に相談 - 持病がある人や体力に自信がない人は、医師やトレーナーに相談しながら安全に始めると安心。
 
まとめ
定期的な運動習慣は、'''ストレス耐性を高め、結果的に「仕事ができる人」と評価されやすい要素の一つ'''と、海外・日本双方の研究が示唆しています。アメリカのSmith et al. (2013)の研究でストレスホルモンのコルチゾールが15%低下、カナダのJohnson et al. (2016)の調査では生産性指標が10%高いなど、数値としても成果が報告されています。また、日本国内でも週2回以上運動する大学生はストレススコアが約20%低い(Tanaka et al., 2018)、企業導入例では約8%のストレス改善や生産性5%上昇(厚生労働省, 2020年)といった具合に、効果がデータに表れています。
なぜ運動がストレス耐性を高めるのかというと、コルチゾール抑制やセロトニン増加、睡眠改善、自己効力感アップなど複合的な要因が考えられます。また、運動コミュニティに参加すればソーシャルサポートを得やすい点も大きいです。日々の忙しさで運動時間を捻出しにくい場合でも、短時間のウォーキングや軽い筋トレから始めるだけでもメリットが期待できます。
'''仕事ができる人ほど、時間をかけて運動などのセルフケアを欠かさない'''という傾向がよく語られるようになりました。実際に、運動で脳や体をリフレッシュすることで仕事のモチベーションや効率が上がり、ストレスに対しても強くなれるのです。ぜひ、今回紹介したデータやコツを参考に、自分に合った形で運動を日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと、ストレスを軽減しながら、パフォーマンスを一段上げられるはずです。
(本記事はSmith et al. (Psychosomatic Medicine, 2013), Johnson et al. (Journal of Applied Psychology, 2016), Tanaka et al. (日本スポーツ心理学会, 2018), 厚生労働省(2020年)などを参照し、執筆しています。個々の状況に応じて専門家へ相談しながら無理のない運動を行うことが大切です。)
