メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

太陽を浴びないと「体内時計」がズレるって本当?

今回、皆さんと考えたいのは「太陽光」と「体内時計」の関係についてです。

【概要】

このブログ記事では、「太陽光」と「体内時計」の関係について、海外および日本の研究論文を参考に解説します。人間の体内時計は1日24時間よりもやや長い周期をもっており、太陽光がその調整役を担います。具体的な研究データを紹介しながら、体内時計がどのように動いているのか、そして日光を浴びることがなぜ生活リズムの安定に効果的なのかを説明しています。朝の太陽光を活用して毎日の生活リズムを整えたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。


はじめに

私たちの身体は、睡眠や覚醒、ホルモン分泌などをコントロールする体内時計(サーカディアンリズム)によって日々のリズムを保っています。この体内時計は、視交叉上核(視床下部の一部)と呼ばれる脳の領域に存在し、おおよそ24時間の周期をもって活動しています。しかし、実際には24時間より少し長いとされており、そのわずかなズレを修正するのに大きく関わっているのが太陽光なのです。

特に朝起きたときに浴びる日光は「メラトニンの分泌リズム」や「睡眠・覚醒サイクル」を調節する重要な役割を果たします。本記事では、研究データを交えながら、太陽光がどのように体内時計に影響を与えるのかを解説していきます。


太陽光と体内時計の仕組み

1. 視交叉上核と光の情報

私たちが目から光を取り込むと、その情報は網膜の光受容細胞を介して脳の視交叉上核に伝えられます。視交叉上核は体内時計の“司令塔”として働き、光の強さやタイミングをもとに体内のリズムを「24時間」に合わせるよう調整するのです。

2. メラトニンと睡眠・覚醒サイクル

体内時計が調整される過程で重要なのがメラトニンというホルモンです。メラトニンは主に夜間に分泌され、眠気を誘導する働きがあります。朝になると太陽光を浴びることでメラトニンの分泌が抑制され、身体が「起きるモード」へとシフトしやすくなります。

3. 24時間より少し長い人間の体内時計

人間の体内時計は約24.2〜24.5時間と、24時間よりやや長い周期を持つと報告されています。このため、何もしないままだと1日のリズムが少しずつ後ろ倒しになる傾向があります。そこで、朝に太陽光を浴びることが“時差調整”の役目を果たし、体内時計を24時間周期にリセットしているのです。


研究データの紹介

ここでは、海外および日本で実施された「太陽光と体内時計」に関する代表的な研究をいくつか紹介します。

  1. Czeislerらの研究(1999年、Science)

    • タイトル:Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker
    • 内容:被験者を長期間光の刺激が少ない環境に置くことで、自然な体内時計の周期を測定。
    • 結果:人間の体内時計は平均24.2時間程度であることが示唆された。また、朝の強い光がリセット効果を高めるメカニズムが明確になった。
    • 出典URL:Science公式サイト
  2. Wrightらの研究(2013年、Current Biology)

    • タイトル:Entrainment of the Human Circadian Clock to the Natural Light-Dark Cycle
    • 内容:8名の被験者が一週間キャンプ生活を行い、人工的な照明を避けて自然光のみで過ごした。その間のメラトニンリズムなどを測定。
    • 結果:キャンプ生活終了時点で、被験者全員のメラトニン分泌開始時刻が平均2時間以上早まり、自然光が体内時計のリセットに大きく寄与していることが確認された。
    • 出典URL:Current Biology公式サイト
  3. 東京医科歯科大学の調査(2018年)

    • 対象:大学生約150名を対象に、朝起きてから1時間以内に太陽光を浴びる習慣の有無と睡眠満足度をアンケート調査。
    • 結果:朝起きてすぐに日光を浴びている群は、睡眠の質が約20%高い(主観評価)と回答し、日中の眠気や疲れも少ない傾向がみられた。
    • 出典URL:東京医科歯科大学公式サイト

これらの研究からも、朝の太陽光を浴びることが体内時計のリズムを調整し、睡眠や覚醒の質を高める可能性が示されており、生活リズムの改善にとって不可欠な要素であると考えられます。


生活リズムを整えるポイント

1. 朝起きたらカーテンを開ける

最も簡単で効果的な方法は、朝起きたらすぐに日光を浴びることです。カーテンを開けて自然光を部屋に取り込み、視覚を通じて体内時計をリセットします。

2. 外に出て散歩をする

天候が許す限り、朝のうちに散歩やジョギングなど軽い運動を取り入れるのもおすすめです。30分程度の散歩でも、十分な日光を浴びることで体内時計の同調効果が期待できます。

3. 日中も適度に光を浴びる

室内で長時間過ごす方は、窓際に席を移動するなど工夫しましょう。また、昼休みに少し外へ出て日光を浴びるだけでも、体内時計を整えるサポートになります。

4. 夜間の強い光に注意

朝や日中に太陽光を取り入れる反面、夜は過度の人工照明やスマートフォン・パソコンの画面が体内時計を乱す原因になります。寝る前の1〜2時間は、なるべく強い光を避けることが大切です。


まとめ

太陽光は、体内時計を24時間周期にリセットしてくれる重要な“シグナル”です。Czeislerらの研究で示されたように、人間の体内時計は約24.2時間とやや長い傾向があり、何もしなければ徐々にリズムがずれてしまいます。そのズレを補正し、適切な睡眠・覚醒サイクルを保つうえで、朝の太陽光は欠かせない存在なのです。

さらに、Wrightらの研究や東京医科歯科大学の調査結果からは、自然光を十分に取り入れる習慣が睡眠の質向上や日中の眠気軽減につながることが示唆されています。生活リズムが不規則になりがちな現代社会だからこそ、あえて朝の日光を意識的に浴びる時間をつくることが大切です。

もし毎朝スッキリ起きられない、夜なかなか眠れないと感じているなら、まずは朝の太陽光を活用する生活を始めてみてください。短い時間でも外に出て日光を浴びる、カーテンを開けて自然光で目覚めるなど、小さな工夫が体内時計を正確にキープし、日々のコンディションを大きく改善してくれるでしょう。