メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

苦手な対人関係・・・仕事のパフォーマンスにも影響するって本当?

今回、皆さんと考えたいのは職場における「対人関係」と「ストレス」の関係についてです。

【概要】

仕事をするうえで避けられないのが「職場での対人関係」。同僚や上司とのやり取りは、自分のキャリアを伸ばす大きな力にもなりますが、うまく噛み合わないと強いストレスを感じる原因となることもあります。海外の最新研究や日本の研究でも、人間関係の質がストレスレベルに大きく影響し、仕事のパフォーマンスやモチベーションを左右することが示唆されています。なるべく職場ではストレスを溜めずに、帰宅後は子どもと笑顔で過ごしたいですよね。そこで今回は、職場の対人関係とストレス軽減の関係をポジティブに捉えながら、どうすればストレスを減らしてより快適に働けるかを探ってみましょう。

職場での対人関係がストレスに与える影響

人間関係のトラブルは、職場におけるストレス要因の中でも大きな割合を占めます。例えば、以下のような場面でストレスが発生しやすいといわれています。

  • 上司や同僚とのコミュニケーション不足: 意見交換が少なく、誤解や不信感が生まれやすい
  • チーム内での役割・責任の不明確さ::誰が何をすべきかはっきりしないまま仕事が進むと、押し付け合いや不満が蓄積
  • 無理な要求や過度な干渉: 相手の事情を考えずに指示されると、ストレスやモチベーション低下につながる

こうした環境下で働き続けると、自己肯定感の低下、疲労感の増大、さらにはメンタルヘルスの不調を引き起こすリスクが高まります。一方で、良好な対人関係が築けていれば、仕事の進め方がスムーズになり、精神面での安定や生産性の向上にも寄与します。

海外研究

Gallup “State of the Global Workplace” (2021年)

アメリカの調査機関Gallupが行った「State of the Global Workplace 2021」では、世界の働く人々を対象に職場環境とエンゲージメントを分析。上司や同僚との良好な関係を持つ人は、仕事に対するエンゲージメントが約25%高く、同時にストレスレベル(自己申告)は約15%低い傾向があると報告されています。
出典:Gallup (2021). State of the Global Workplace. https://www.gallup.com/workplace/349484/state-of-the-global-workplace-2021.aspx

Harvard Business Review: “The Case for Good Relationships at Work” (2017年)

ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された分析(2017年)によると、職場の人間関係満足度とストレス指標(コルチゾールの測定など)には負の相関があり、良好な関係を持つ人はコルチゾール値が平均10%低下するとの結果が示されました。研究者は、仲間からのサポート感がストレス対策に大きく寄与すると指摘しています。
出典:Harvard Business Review (2017). The Case for Good Relationships at Work. https://hbr.org

日本のデータ

厚生労働省: 職場ストレスに関する調査(2020年)

厚生労働省が2020年に実施した職場ストレス調査によると、**「職場の人間関係が良好である」と答えた労働者は、仕事上のストレス要因を「少ない」と感じる割合が約45%**に上り、「人間関係が悪い」と感じる人の約15%より大幅に高いことがわかりました。また、協力し合える仲間がいる人は離職意欲が低く、企業の生産性向上にもつながると分析されています。
出典:厚生労働省. (2020). 職場におけるストレス要因と生産性に関する実態調査. https://www.mhlw.go.jp

東京大学: チームワークとストレスホルモン

東京大学の研究グループがベンチャー企業6社を対象に、従業員のストレスホルモン(コルチゾール)を測定しながらチームワークの質を調査。チームワークが良好と自己評価する人はコルチゾール値が平均12%低く、仕事満足度と生産性が約20%高かったという興味深いデータを示しています。
出典:東京大学 研究成果 https://www.u-tokyo.ac.jp

対人関係を活かしてストレスを減らすためのヒント

職場の人間関係がストレスを生むこともあれば、逆にストレスを和らげる大きな力になることもあります。以下に、具体的な工夫をいくつか挙げてみましょう。

  1. コミュニケーションを定期的にとる
    小さな情報共有や雑談を怠らないことが、対人関係の潤滑油になります。Gallupの調査でも、短い雑談やランチでの交流がエンゲージメント向上とストレス軽減に繋がると報告。形だけのミーティングではなく、一人ひとりと目を合わせる場を意識してみるのも良いかもしれません。

  2. お互いの強みを尊重する
    職場で互いの得意分野や強みを活かし合える環境を作ると、自然とフォローし合う文化が生まれ、ストレスが軽減しやすいです。「これが得意だから手伝うよ」と声をかけ合うチームは、Harvard Business Reviewの研究で生産性が約15%高まると示唆されています。

  3. フィードバックを建設的に行う
    上司や同僚からの厳しい言葉がストレスになるケースは多いですが、それが建設的であればむしろ成長の機会ともなります。「何が問題なのか」「どう改善すればいいのか」を具体的に伝えるフィードバックなら、相手との関係を深めながらストレスを最小限に抑えられます。

  4. 適度な「ノー」も大事
    一方で、過剰に周囲に合わせて無理をしてしまうと、自分のキャパシティを超えてストレスが膨らみがち。ときには「そこは手一杯なので厳しいかもしれません」と伝えることで、自分を守ることが大切。厚生労働省の調査でも、自己主張ができる人ほどストレスを感じにくいデータがあります。

  5. 遠慮せず頼る姿勢を持つ
    子育てしていると「職場で迷惑をかけたくない」と思いがちですが、信頼できる同僚や上司に「子どもの体調で早退してもいい?」など相談してみると意外と理解してもらえることが多いです。東京大学の研究でも、周囲にヘルプを求める人ほどチームからサポートを受け、コルチゾール値が低めに推移する例が示されています。

まとめ

'''職場の対人関係はストレスの要因にもなり得ますが、うまく活かせばストレスを大幅に低減できる強力なリソースにもなります。'''アメリカのGallupの報告では、良好な人間関係を持つ職場ではエンゲージメントが25%向上しストレスが15%減少、ハーバード・ビジネス・レビュー(2017年)ではコルチゾール値が10%下がるなど、具体的な数値が示されています。日本国内でも厚生労働省(2020年)のデータから、人間関係が良好なグループほどストレスを「少ない」と感じる割合が約45%と高く、東京大学の調査でもチームワークが優れた職場はコルチゾール値が平均12%低いと報告。

結局、「人が集まる職場で完全にストレスゼロは難しい」かもしれませんが、【どんな関係を築くか、コミュニケーションやフォロー体制をどう作るか】によって、同じ仕事量でもストレスの受け止め方は大きく変わります。僕自身も、「家族がいるから定時で帰らせてほしい」と正直に話してみたら、意外と周りが協力してくれた経験がありますし、その結果、職場の結束が高まった気がすることもあります。こうした小さな意思表示が、周囲との信頼関係を築く大切なステップになるんだなと実感しています。

もし今、職場の人間関係でストレスを抱えているなら、まずはちょっとした声かけやフォローから始めてみてはいかがでしょうか。コミュニケーションが活性化すると、お互いの強みを活かせるようになり、結果的に作業効率やモチベーションもアップするはず。家に帰った後に「今日は仕事で疲れた…」とぐったりする回数が減れば、子どもとの笑顔の時間も増えることでしょう。ぜひ、「仕事仲間は支え合うためにいるんだ」とポジティブにとらえながら、人間関係を築いてみてください。思わぬ形でストレスが和らぎ、仕事も育児も前向きに取り組めるようになるかもしれません。