今回、皆さんと考えたいのは「読書」と「メンタル」の関係についてです。
【概要】
読書は知識を得るだけでなく、ストレスや不安の軽減など、心の健康にもプラスの影響を与えることが多くの研究で示唆されています。海外ではわずか6分の読書がストレスを約68%軽減するというデータや、日本国内のアンケート結果でも読書習慣がある人は気分の落ち込みを感じにくい傾向があると報告されています。本記事では、具体的な研究データを紹介しながら、なぜ読書がメンタルを安定させるのか、どのような読書法がより効果的なのかについて考えてみます。
はじめに
スマートフォンやパソコンを使った情報収集が当たり前になった現代において、紙の本であれ電子書籍であれ、「読書」という行為にあまり時間を割いていないという人は多いかもしれません。しかし、読書によって得られるリラクゼーション効果や思考の整理効果は無視できないものがあります。実際、イギリスのサセックス大学(Mindlab International)が行った実験や、日本国内での読書週間関連調査を通じて、読書がストレス軽減やうつ症状の緩和に寄与する可能性が報告されています。
読書がメンタルに与えるメリットは、リラクゼーションだけでなく、自己理解や他者理解を深めることにもつながります。物語や論説など多様な世界に触れることで、視野が広がり、気分転換にもなるのです。ここでは、そうした読書とメンタルの関係を、海外・日本の研究データを踏まえて解説します。
読書がメンタルに与える主なメリット
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【ストレス軽減】 
 短時間の読書であっても、気分の安定や心拍数の低下などリラックス効果が得られる可能性がある。
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【うつ症状の緩和】 
 物語やエッセイに没頭することで、ネガティブな思考パターンから一時的に離れられ、思考を整理するきっかけになる。
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【不安・緊張の解消】 
 先が読めない不安定な状況でも、読書を通じて客観的な視点を取り戻したり、心を落ち着ける手段として活用できる。
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【自己啓発・セルフケアのツール】 
 読書によって自己理解を深めたり、カウンセリング的効果を得られる場合もある。特に「ビブリオセラピー(読書療法)」が注目されている。
海外の研究例
イギリス・サセックス大学の実験(Mindlab International, 2009)
イギリスのサセックス大学が行った実験(2009年)では、被験者の脈拍や筋緊張度などを測定しながら読書・音楽・散歩などのリラクゼーション効果を比較しました。その結果、'''わずか6分の読書によってストレスレベルが最大68%低下した'''というデータが報告されました。
研究チームは、読書が脳を物語や論説の世界へ集中させることで、日常の悩みやストレス要因から意識を切り離す作用があると説明しています。
https://www.telegraph.co.uk/news/health/news/5070874/Reading-can-help-reduce-stress.html
アメリカの公共図書館調査
アメリカのある公共図書館協会が行ったアンケート(2020年)では、'''回答者の約45%が「読書は不安やうつの軽減に役立つ」と感じている'''と回答しました。特に小説やミステリー、ファンタジーなどのジャンルが現実のストレスから離れる助けになるという意見が多かったとされています。
日本の研究例
読書週間関連アンケート(文字・活字文化推進機構, 2019)
NPO法人文字・活字文化推進機構が2019年に行った読書週間関連アンケートによれば、'''「読書をすると気分転換できる」と回答した人は全体の約72%'''にのぼり、そのうち「不安やストレスの軽減を感じる」と答えた人は約55%でした。読み手の多くが読書にリラクゼーション効果を感じていることが示唆されています。
メンタルヘルスと読書の関連調査(ベネッセ教育総合研究所, 2021)
ベネッセ教育総合研究所が中学生・高校生計2,000名を対象にした調査(2021年)では、「週に1回以上読書(電子書籍を含む)をする生徒グループ」は、「まったく読まない生徒グループ」に比べて心理的ストレス指標(K6スコア)が約10%低く、落ち込みの頻度もやや少ない傾向が見られました。研究チームは、読書が学習モチベーションや情緒的安定感と関連している可能性を示唆しています。
読書によるメンタル改善のメカニズム
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没頭感・マインドフルネス効果 
 読書に没頭することで、日常のストレス要因から意識が切り離される「マインドフルネス状態」に近い効果が得られる。
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感情移入による感情解放 
 小説などの物語に登場するキャラクターの心情や状況に共感し、自分の感情を客観的に見つめられる。これがセラピー的な効果を持つと考えられる。
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知識や視点の拡大 
 新しい情報や考え方に触れることで、狭くなっていた思考の幅が広がり、ストレスや不安を捉え直すきっかけになる。
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リズムと集中力 
 文字を追い、文脈を理解するプロセスが脳の多様な領域を活性化し、集中力を高める。結果的にイライラや落ち込みを和らげるという説もある。
どのような読書が効果的か
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ジャンルは自分が興味を持てるもの - 興味のあるジャンルを選ぶことで没頭感が高まりやすく、ストレス緩和につながる。
- 小説、エッセイ、自己啓発本、漫画など、形態を問わずOK。
 
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短時間でも定期的に - 毎日10分程度の読書でもストレスが和らぐというデータがある(サセックス大学の研究)。
- 忙しい人は通勤時間や寝る前など、スキマ時間の活用を意識する。
 
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紙の本か電子書籍か 
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読むだけでなく、音読や朗読も検討 - 音読や朗読をすることでさらに脳が活性化し、集中力が高まるという報告がある。
- 読み聞かせのように家族や友人と共に楽しむ方法も。
 
日常生活での取り入れ方
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毎日の習慣化 
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気分や目的に合わせて本を選ぶ - 仕事や勉強で疲れているときはライトな小説やエッセイでリフレッシュ。
- 不安やストレスが強いときは自己啓発書や心理学の本で客観的視点を得るのも一案。
 
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図書館やブックカフェの利用 - 家で集中しづらい場合、図書館やブックカフェの落ち着いた空間を活用すると読書に没頭しやすい。
- 友人や読書会などでおすすめの本を紹介し合うのもモチベーションアップにつながる。
 
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オーディオブックや朗読アプリの活用 - 活字を読むのが苦手な人は、オーディオブックで耳からストーリーを楽しむ方法もある。
- 通勤中や家事の合間に聴き流しするだけでも気分転換になる。
 
まとめ
読書がメンタル面に与える良い影響は、'''ストレス軽減やリラクゼーション効果、うつ症状の緩和など多岐にわたる'''と複数の研究で示されています。イギリスのサセックス大学の実験では、わずか6分の読書でストレスが最大68%低下するというデータが報告されており、日本国内でも読書週間関連のアンケートで「読書による気分転換」を実感する人が約72%にのぼりました。さらに、ベネッセ教育総合研究所の調査などでは、週に1回以上読書を行う人の方が抑うつ傾向が低い可能性が示唆されています。
なぜ読書にストレス緩和やメンタル改善の効果があるのかは、集中力の向上や脳内の神経伝達物質の分泌、物語への没入によるマインドフルネス状態など、いくつものメカニズムが考えられます。ジャンルや形式は問わず、紙の本でも電子書籍でも、'''自分が興味を持てる内容を選び、短時間でも定期的に読書を取り入れる'''ことで効果を得やすくなるでしょう。
忙しい現代人にとって時間の確保は課題ですが、通勤・通学や就寝前などのちょっとしたスキマ時間に10分程度の読書を行うだけでも気分転換になり得ます。オーディオブックのような形態であれば、手や目を使わずに耳で楽しめるため、料理や家事の合間にも活用可能です。'''読書は単なる趣味にとどまらず、メンタルヘルスを維持・向上させる有力な手段の一つ'''として、日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。
(本記事はサセックス大学(Mindlab International, 2009)の実験やNPO法人文字・活字文化推進機構のアンケート結果などを参照し、執筆しています。読書とメンタルに関する具体的な悩みがある場合は、心理カウンセリングや医療機関に相談しつつ、読書療法(ビブリオセラピー)の専門家の意見を参考にするのも一案です。)
