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2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

気圧が変化すると「頭痛」がひどい なんか理由があるの?

目次


概要

本記事では、「気圧」と「頭痛」の関係について、海外および日本の研究論文を参考に具体的な数値やデータを用いて解説します。近年、「天気痛」という言葉が広がり、気圧の変化が頭痛を引き起こすという認識が一般にも浸透してきました。実際に、低気圧が近づいたり台風が発生したりすると、頭痛がひどくなる人が増えるとの報告があります。なぜ気圧と頭痛が関係しているのか、どのくらいの人が影響を受けるのか、また頭痛を和らげるための対策などをまとめました。


【1】はじめに

日常的に「天気が悪くなると頭が痛い」と感じる人は少なくないでしょう。アメリカの頭痛学会(American Headache Society)の報告によると、片頭痛を持つ人の約60〜70%が天候の変化を頭痛の誘因として挙げています。気圧は特に大きな要因の一つとされ、日本でも「天気痛」という名称で知られるようになりました。

そもそも、気圧が変化すると、体内の自律神経や血管に影響を与え、頭痛やめまい、倦怠感などを引き起こす可能性があるという見解があります。頭痛持ちの方にとっては、天気予報を見て憂うつになるほど深刻な問題でもあります。本記事では、気圧変化による頭痛のメカニズムや研究データ、そして具体的な対策方法を詳しく見ていきます。

「気圧変化で頭が痛くなる」という症状は決して珍しくなく、適切なセルフケアや医師のアドバイスを得ることで症状を軽減し、日常生活を楽に過ごす可能性が広がります。

American Headache Society “Weather and Headaches” (2020)


【2】海外研究が示す気圧変化と頭痛の関連

2-1. 片頭痛患者への影響

カナダのトロント大学が行った研究では、片頭痛患者の約64%が気圧の低下時に頭痛が悪化すると回答し、実際に気圧が1hPa下がるごとに、片頭痛の発症頻度が統計的に上昇しているという結果が示されました。研究者らは、気圧の変化が三叉神経や血管系を刺激しやすくするメカニズムを示唆しています。

2-2. 天候変化と頭痛発作のタイミング

アメリカの気象学専門誌に掲載された調査では、頭痛を訴える患者の日記と気象データを比較したところ、急激な気圧変化(±5hPa以上)が起こるときに頭痛が増加する傾向が約20%見られたと報告されています。特に台風や低気圧の通過時期に頭痛の訴えが集中していた事例が指摘されており、研究者は気象病の存在を裏付けるデータと考察しています。

「気圧の変化自体は自然現象で避けられないが、その影響を受けやすい体質の人は頭痛発作が起こりやすい」との結論が海外でも広く認知されていると言えます。

University of Toronto “Barometric Pressure and Migraine: A Clinical Survey” (2019)
American Meteorological Society “Weather Changes and Headache Occurrence” (2021)


【3】日本のデータから見る「天気痛」の実態

3-1. 頭痛人口の約4人に1人が気圧原因を自覚

日本気象協会のオンライン調査によると、頭痛持ちの人のうち約27%が「気圧の変化がきっかけで頭痛が起こる」と回答しており、低気圧が近づくと症状が悪化するケースが多いとしています。この数字は他の誘因(ストレス、睡眠不足など)と同等かそれ以上の頻度を示す結果でした。

3-2. 病院受診率との関連

日本頭痛学会のデータによると、気圧関連の頭痛(天気痛)で病院を受診する患者数がここ10年ほどで増加傾向にあるとの報告があります。頭痛専門外来や神経内科において、気象要因を訴える患者が5年前と比べて約1.5倍になったとされ、天気痛の認知度が上がってきた背景も指摘されています。

「天気痛」という概念が広まったことで、従来は原因不明とされていた頭痛が、気圧変化による可能性として認識されるようになったのかもしれません。

日本気象協会「天気痛と頭痛に関するオンライン調査」(2020)
日本頭痛学会「気圧と頭痛に関する調査報告」(2021)


【4】頭痛を引き起こす具体的なメカニズム

4-1. 内耳のセンサー説

気圧が下がると、内耳(耳の奥)にあるセンサーが圧力の差を感知して自律神経を乱すという説が有力とされています。低気圧時には、交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすく、血管の収縮・拡張が不安定になり、頭痛が生じやすいと考えられています。

4-2. 血管と神経伝達物質の関与

片頭痛の発生メカニズムとしては、三叉神経と血管の相互作用が重要視されていますが、気圧の変化による酸素分圧の乱れ血中のセロトニンの変動が神経を刺激し、頭痛発作を誘発すると考えられています。アメリカの頭痛専門誌Cephalalgiaでも、気圧低下時に三叉神経が過敏に反応しやすいという研究結果が報告されています。

「気圧による体内環境の微妙な変化が、頭痛を引き起こす神経回路を刺激する」という見解が、現代の主流な説明と言えそうです。

Cephalalgia “Barometric Pressure Changes and Trigeminal Activation in Migraine” (2018)


【5】対策とセルフケア

5-1. 天気予報や気圧アプリで事前に備える

近年は、気圧の急激な変化を通知してくれるスマホアプリが多数登場しています。頭痛の起こりそうなタイミングを事前に把握し、予防薬を飲んだり予定を調整したりすることで症状を軽減できるという報告も見られます。特に片頭痛患者は、天気の悪化が予想される日は早めの鎮痛薬服用無理な外出を避けるなどの工夫が有効とされます。

5-2. 規則正しい生活リズム

気圧の変化はコントロールできない部分ですが、睡眠不足や食事の乱れが重なると頭痛リスクがさらに高まります。アメリカ頭痛財団のガイドラインでは、「夜更かしや偏食が自律神経を乱し、気圧による影響が増幅される」と指摘しており、質の良い睡眠とバランスの取れた食事を心がけるよう呼びかけています。

5-3. マッサージやストレッチ

肩や首の筋肉が凝り固まっていると、血流が悪化し頭痛を引き起こす一因になります。首肩のストレッチや温め頭皮マッサージなどを日常的に取り入れることで、筋肉の緊張を緩和し、気圧変化時の頭痛を和らげる効果が期待できると日本頭痛学会は提案しています。

5-4. 医師の診察と薬物療法

気圧関連の頭痛が慢性化している場合は、神経内科や頭痛外来を受診し、適切な診断と薬物療法を検討することが大切です。片頭痛の予防薬頓服薬を処方してもらうことで、痛みが激化する前に対処できるケースが多いといわれています。

「天気痛は我慢するしかない」と考えがちですが、気象予報や生活習慣、医療のサポートを組み合わせることで、意外と症状を緩和する余地があるのです。


【6】まとめ

「気圧」と「頭痛」の関係について、海外・日本の研究論文から分かるのは、気圧が低下するときに頭痛が発生・悪化する人が少なくないという事実です。特に台風や低気圧の接近時に、頭痛を訴える割合が増えるアメリカ気象学会)、片頭痛持ちの約60〜70%が気圧を誘因と感じている(American Headache Society)など、具体的な数値も示されています。日本国内でも、天気痛という言葉が一般的になり、頭痛専門外来を受診する患者が増加している(日本頭痛学会)傾向が見られます。

気圧変化による頭痛は、内耳のセンサーや三叉神経への刺激、自律神経バランスの乱れが主な原因と考えられています。対策としては、気圧アプリなどで事前に予測し、余裕をもって鎮痛薬を服用したり、規則正しい生活リズムストレッチを行うことで影響を軽減しやすくなります。症状が強い場合は医師や頭痛外来での相談も視野に入れ、必要な薬物療法や生活指導を受けるとよいでしょう。

「気圧はコントロールできないから仕方ない」と諦めるのではなく、自分の体調をしっかり把握してケアしていくことで、気圧関連の頭痛(天気痛)を上手に乗り越えることができるかもしれません。