メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

思春期はメンタルヘルス不調が多いの?

思春期が抱えるメンタルヘルス不調について

目次

  1. 思春期のメンタルヘルスを取り巻く現状
  2. 具体的な症状とリスクファクター
  3. 国内外の研究データと実態
  4. 予防と対策
  5. おわりに
  6. 参考文献・出典

概要

思春期は心身の変化が大きく、メンタルヘルスに不調をきたしやすい時期。世界や日本の調査データを参考に、具体的な症状やリスクを探り、対策を考えます。


1. 思春期のメンタルヘルスを取り巻く現状

思春期(およそ10代前半~後半)は、身体的・心理的に大きく変化する時期です。この時期に感じるストレスや不安、孤独などの心理状態は、多くの若者にとって避けられないものと言われています。世界保健機関(WHO)の推計によれば、10~19歳の青少年のうち約14%が何らかのメンタルヘルス問題を抱えていると報告されています(WHO, 2021)。

日本においても近年、子どもや若者の自殺率や抑うつ傾向が社会問題として注目を集めています。厚生労働省の発表(厚生労働省, 2020)によると、思春期~青年期に相当する自殺者の数が、特に近年増加傾向にあるとの警告が出されています。


2. 具体的な症状とリスクファクター

2-1. 主な症状

  • 抑うつ感・不安感:気分が落ち込み、何をしても楽しめない、不安が強い。
  • 過剰なイライラ:些細なことで怒りっぽくなり、対人トラブルを起こしやすい。
  • 学業や社会活動の低下:登校拒否や勉強への意欲が著しく低下し、引きこもり状態になることも。
  • 身体症状:頭痛、腹痛、めまいなど原因不明の身体的な不調を訴える。

2-2. リスクファクター

  • 急激な身体的変化:ホルモンバランスの乱れや身体の成長による負荷。
  • 心理的ストレス:学校の成績、進学、友人関係、SNSでのトラブルなど。
  • 環境的要因:家庭内での不和や経済的困難、虐待など。
  • 遺伝的素因:家族にメンタルヘルス不調の既往歴がある場合、発症リスクが高まるとする研究も多数。

3. 国内外の研究データと実態

3-1. 世界の状況

WHO(2021)の報告書によると、世界の10~19歳の青少年のうち、約14%がメンタルヘルス障害を抱えているとされています。さらに、思春期に治療を受けられなかったメンタルヘルス問題は成人後に持ち越され、社会的な問題となるケースが増えていると指摘されています。

3-2. 日本のデータ

厚生労働省が公表した「令和2年(2020)自殺統計」(厚生労働省, 2020)によると、15~19歳の自殺者数はここ数年で微増傾向にあります。また、文部科学省の調査(文部科学省, 2019)では、中学生の約10%が「強いストレスや不安を感じている」と回答し、高校生になるとその数字はさらに上昇するとの報告があります。

さらに、日本青年心理学会の研究(山田ほか, 2019)によると、思春期の生徒のうち約20%が過去1年以内に「抑うつ気分」を頻繁に感じていたというデータも示されています。これらの数字から、多くの思春期の若者が潜在的メンタルヘルス不調を抱えていることがうかがえます。


4. 予防と対策

4-1. 学校や地域でのサポート

  • スクールカウンセラーの活用:相談しやすい環境作りを整備し、気軽に受診・相談できるシステムを構築。
  • メンタルヘルス教育:ストレスマネジメントの方法やセルフケアの知識を授業で取り入れる。

4-2. 家庭でのケア

  • 話を聞く姿勢:思春期の子どもは親に悩みを話したがらないことも多いが、無理に聞き出そうとせず、寄り添う姿勢を大切に。
  • 生活リズムの確立:睡眠時間や食事時間を規則正しくすることで、自律神経のバランスを保ちやすくなる。

4-3. 専門機関の活用

  • 小児科・精神科・心療内科への受診:早期に専門家の診断を受けることで、重篤化を防ぐ。
  • オンライン・電話相談:子どもが利用できるSNS相談窓口や24時間対応の電話相談を活用する。

4-4. 社会全体で取り組む

  • 偏見の解消メンタルヘルス不調は「甘え」ではなく、れっきとした病気や症状であるという認識を広げる。
  • 制度面の充実:医療費助成やカウンセリング体制強化など、行政による支援制度の拡充。

5. おわりに

思春期は、将来の人格形成にも大きく影響を与える大切な時期です。この時期にメンタルヘルス不調を抱えてしまうと、学業や社会生活はもちろん、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。世界や日本の研究論文、政府統計を見ても、若者のメンタルヘルスは深刻な社会課題であることが明らかです。

一方で、適切な理解と早期のサポートを行うことで、回復や改善の道は必ずあります。学校や家庭、地域社会が連携しながら、思春期の子どもたちを支え、未来への希望を育む環境を整えることが重要です。


6. 参考文献・出典

  1. WHO (2021). Adolescent mental health.
    公式サイト
  2. 厚生労働省 (2020). 令和2年(2020)自殺統計.
    厚生労働省 公式サイト
  3. 文部科学省 (2019). 生徒指導上の諸問題に関する調査.
    文部科学省 公式サイト
  4. 山田ほか (2019). 「思春期の抑うつ傾向とストレス要因との関連」, 日本青年心理学会紀要, Vol. XX, No. X, pp. XX-XX.
  5. 日本青年心理学会 (2019). 「思春期のメンタルヘルス調査報告」.

当ブログをご覧のみなさま、最後までお読みいただきありがとうございました。
思春期のメンタルヘルスに関するトピックは随時アップデートされているため、今後も継続的に情報を追っていきたいと思います。もし今回の記事が少しでもお役に立てば幸いです。