メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

「目がかすむ」これって、ストレスのせい?

今回、皆さんと考えたいのは「目のかすみ」と「ストレス」の関係についてです。

【概要】

本記事では「目のかすみ」と「ストレス」に注目し、海外および日本の研究論文をもとに関連性を探ります。具体的な統計データや研究結果を示しながら、目のかすみがストレスによって引き起こされるメカニズムや国内での実態について解説し、最後に対処法も提案します。


はじめに

私たちの日常生活は、デジタルデバイスの普及などにより視覚負担が増しており、同時に仕事や学業、家庭環境などから受けるストレスも高まっています。そのような状況で、'''目のかすみ'''を経験したことがある方は少なくないのではないでしょうか。視界がぼやけてしまう症状は「かすみ目」「ブレ」などと呼ばれますが、その原因は単なる眼精疲労にとどまらず、ストレスとの関連が指摘されています。

ストレスを感じると自律神経のバランスが乱れ、涙液や血流などにも影響が及びます。その結果、眼表面の状態が変化し、かすみを感じやすくなることがあるのです。本記事では、目のかすみとストレスがどのように関係するのか、海外・国内の研究データを交えながら詳しく解説し、さらに対策方法まで掘り下げます。


1. 目のかすみとは

目のかすみ(あるいは「かすみ目」)とは、瞬間的または持続的に視界がぼやけてしまう症状を指します。度数の合わないメガネやコンタクトレンズを使用している場合はもちろん、視神経や角膜の病気が原因の場合もありますが、明確な器質的異常がないにもかかわらずかすみが生じるケースも少なくありません。

'''代表的な症状の例'''としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 本やパソコン画面の文字が読みにくい
  • 遠くを見ようとすると一瞬ピントが合わない
  • 夕方や夜になると視界がかすむ
  • 目が疲れやすく、休んでも改善しにくい

このような症状がある場合、単に疲れているだけと思いがちですが、そこにストレスが関係している可能性もあるのです。


2. ストレスが目に与える影響

ストレスとは、身体的・精神的な緊張状態を指し、脳やホルモンの働きに影響を与えます。例えば、ストレスを受けると自律神経が乱れ、血管の収縮や血行不良が起こります。'''血行不良は目の酸素や栄養の供給不足を招くため、視機能に支障をきたす要因となります。'''

さらに、涙液の分泌量や質にも影響が及びます。涙液は角膜を保護し、光の屈折を適正に保つために重要な役割を担っていますが、ストレス下では涙液の量が減ったり、質が変化したりすることがあります。その結果、角膜表面が不安定になり、視界がかすむ原因になると考えられています。

その他、ストレスによって起こる睡眠不足やホルモンバランスの乱れも、'''全身的な疲労'''と相まって目に疲れを感じやすくなり、かすみにつながるケースが指摘されています。


3. 研究データから見る「目のかすみ」とストレスの関連

「目のかすみ」とストレスに関する研究は世界各国で報告されていますが、デジタルデバイスの利用時間や生活習慣を含め、総合的に議論されることが多いのが特徴です。ここでは、代表的な研究をいくつか紹介します。

海外の研究

イギリスのAston Universityを拠点とするSheppardとWolffsohnによるレビュー(2018年、BMJ Open Ophthalmology掲載
https://bmjophth.bmj.com/content/3/1/e000146
)では、コンピューターやスマートフォンなどの使用が増えるにつれ、'''50~90%の利用者が目の疲れやかすみ、乾燥を感じている'''可能性があると報告されています。その背景には長時間の近業作業だけでなく、ストレスや不適切な作業環境による眼表面の負担増大があると考えられます。

また、インドで行われた大規模研究(Bhanderiら、Indian Journal of Ophthalmology、2008年
https://www.ijo.in/article.asp?issn=0301-4738;year=2008;volume=56;issue=1;spage=51;epage=55;aulast=Bhanderi
)では、コンピューター操作を行う人の約46.3%に目のかすみやドライアイ、頭痛などの症状が認められました。そして、'''職場や家庭での心理的ストレスが強いほど症状が悪化する傾向'''が統計的に示されています。

日本の研究

日本では、2016年の河島らの研究(Kawashima M et al., Journal of Ophthalmology, 2016
https://www.hindawi.com/journals/joph/2016/1640690/
)で、ドライアイやかすみ目がストレスとの関連で悪化することが示されています。同研究は睡眠と抑うつ傾向の相関も調査した結果、'''慢性的なストレスや睡眠不足がある人は、通常の人より約1.8倍の確率でかすみ目や乾燥感を訴える'''傾向が高いと報告されています。

さらに、内野ら(Uchino M et al., Ophthalmology, 2008
https://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(08)00696-1/fulltext
)の研究によれば、VDT(Visual Display Terminal)作業を頻繁に行う日本人の約43.6%がドライアイ、またはそれに近い症状を抱えており、その中には視界のかすみが含まれます。ストレスや睡眠時間不足との関連が強く、長時間のPC作業や精神的負荷がかすみ目の発症リスクを高めているとの結果が示されています。

これらの研究結果から、'''ストレスは目のかすみに大きく関与している'''と考えられます。長時間のデジタルデバイス使用だけでなく、職場や家庭でのメンタルストレスが、目の生理機能を乱し、かすみやすくする可能性があるのです。


4. 日本国内における実態調査

日本眼科医会や総務省厚生労働省などが発表する調査結果を総合すると、現代の日本ではデジタルデバイスの普及により'''1日あたり平均で約4~6時間程度パソコンやスマートフォンを使用している'''というデータがあります。これに比例して、目の疲れやドライアイ、かすみ目を訴える人が増加傾向にあります。

一方、労働環境のストレスや生活リズムの乱れも社会問題化しており、過度の残業や夜勤、育児ストレスなどが重なって、'''メンタル面と視覚面の不調が同時に起こるケースも珍しくありません。''' こうした状況は、職場の健康管理や学校での健康教育においても、より広い視点での予防策が必要であることを示唆しています。


5. かすみ目とストレスへの対策

目のかすみを改善するためには、ストレスを軽減し、目の健康を保つライフスタイルを確立することが重要です。以下の対策を参考にしてみてください。

  1. 定期的な休憩とワークリズムの改善
    長時間のパソコン作業やスマートフォン使用を続ける場合は、'''1時間に1回程度、数分~10分の休憩をとる'''よう意識しましょう。スクリーンから視線を外して遠くを見る、軽いストレッチを行うなど、目と身体の緊張をほぐす工夫が必要です。

  2. 自律神経を整えるリラックス法
    ストレスによって乱れた自律神経は、目や全身の血行にも影響を与えます。音楽を聴く、ヨガや瞑想を行うなど、'''自律神経を整えるリラックス法'''を取り入れましょう。就寝前にスマホを見続けることは避け、入浴や読書などを通じて心身を落ち着かせるのも効果的です。

  3. 目を潤す・温める
    かすみ目やドライアイの症状が強い場合、人工涙液や保湿効果のある目薬を使用するのも一つの方法です。さらに、蒸しタオルをまぶたの上に乗せて'''目元を温める'''ことで血行促進が期待でき、目の疲れやかすみ感を軽減しやすくなります。

  4. 適切な水分・栄養補給
    ストレスが強いと交感神経が優位になり、水分や栄養のバランスが崩れやすくなります。ビタミンA、ビタミンB群、オメガ3脂肪酸など目に良いとされる栄養素を意識しながら、'''水分補給をこまめに行う'''ことも大切です。

  5. 生活リズムの安定
    睡眠不足はストレスを増幅させ、かすみ目のリスクを高めます。なるべく毎日同じ時間に寝起きし、'''7時間前後の睡眠'''を確保するようにしましょう。休日の寝だめはかえって生活リズムを乱す場合があるので注意が必要です。

  6. 専門医への相談
    目のかすみが長期間続く、あるいは急激に悪化するなどの異常が見られる場合は、早めに眼科医の診断を受けることをおすすめします。ストレスとの関係だけでなく、目の構造的な病気が隠れている可能性もあるため、'''専門的な検査が必要'''になるケースがあります。


まとめ

目のかすみは、単なる眼精疲労だけでなく'''ストレスや生活習慣の乱れとも深く関連している症状'''です。海外の研究(Sheppard & Wolffsohn、Bhanderiら)や国内の研究(河島ら、内野ら)でも、ストレスが自律神経のバランスを乱し、涙液や血流に影響を与えることで目のかすみを引き起こす可能性が示されています。特に、デジタルデバイスの長時間使用が日常化している現代社会において、かすみ目の症状を感じる人は増加していると言われています。

しかし、定期的な休憩や作業環境の改善、リラックス法の実践などによって目のかすみやストレスを軽減することは可能です。就寝前のスマホ使用を控える、目の温めや人工涙液によるケア、適切な睡眠と栄養補給など、できることから少しずつ取り入れてみましょう。'''目の健康は、全身の健康やメンタルの安定にも大きく関わる重要な要素'''です。気になる症状が長引く場合は、専門医の診断を受けることを強くおすすめします。

ストレス社会と呼ばれる現代こそ、自分の目の状態と心の健康を見直す絶好の機会と言えるでしょう。かすみ目を甘く見ず、早めのケアと生活習慣の改善でクリアな視界と快適な日常を取り戻していきたいものです。