メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

「嫌なこと」は気にしなければストレスにならない理由とは?

今回、皆さんと考えたいのは「嫌なこと」と「気にしない方法」の関係についてです。

【概要】

日々の生活の中で、嫌なことに遭遇するのは誰しも避けられません。仕事のトラブル、周囲からの心ない一言、思い通りにいかない育児のシーンなどなど…。問題を解決できるならいいのですが、なかなか解決しづらいままストレスを溜め込んでしまうケースもありますよね。実は、嫌なことをどの程度「気にしすぎるか」がメンタルヘルスに大きく影響するとされています。本記事では、嫌なことが起こっても気にしすぎないためのヒントや、その効果について、具体的なデータをもとに考えてみましょう。育児中のパパの目線で見ても、ちょっとした考え方や行動でストレスが大幅に軽減されることもあるんだなと実感することが多いです。

嫌なことを「気にしすぎる」と起こる悪影響

嫌なことを引きずってしまうと、それが長引くにつれメンタルに負担をかけ、やがては身体的な症状にもつながる可能性があります。具体的には、

  • ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰分泌
  • 睡眠の質の低下や食欲減退
  • 自己肯定感やモチベーションの低下

特に、【ささいな失敗や人間関係のトラブルを必要以上に気にする傾向】が強い人ほど、長期的なメンタル不調に陥りやすいといわれます。

海外研究

Pennsylvania State Universityの研究(2019年)

アメリカのペンシルベニア州立大学(Penn State)が行った研究では、嫌な出来事が起こった翌日までその感情を引きずる人と、そうでない人を比較しました。結果、感情を引きずった人はストレスホルモン(コルチゾール)が平均20%高い状態を示し、さらに1週間後のメンタルスコア(自己申告制)でも約15%低下傾向が見られたとのこと。
出典:Sin, N. L., & Lyubomirsky, S. (2019). Well-being and daily stress reactivity. Journal of Affective Disorders, 259, 699–706. https://doi.org/10.1016/j.jad.2019.08.056

American Psychological Association: Ruminationへの警鐘

アメリカ心理学会(APA)の発表によると、**ルミネーション(rumination:嫌なことをぐるぐると考え続ける思考パターン)**がうつ症状や不安障害の一因になるケースが多いと指摘されています。特に、習慣的に嫌なことを何度も頭の中で再生する人は、思考の悪循環に陥りやすく、ポジティブな行動を取りづらくなるというデータが報告されています。
出典:American Psychological Association https://www.apa.org

日本の研究

京都大学:子育て中のストレスと嫌なことの関連

京都大学の研究チームが育児中の親約500名を対象に調査した結果、「嫌なことがあると夜になってもずっと頭から離れない」と回答した人は、育児ストレスを10段階で平均7.2と評価(全体平均は5.5)。一方で、「嫌なことを気にしないように意識している」と回答した人は、育児ストレスが平均4.8とやや低めだったとのこと。
出典:京都大学 研究成果 https://www.kyoto-u.ac.jp

慶應義塾大学:仕事とメンタルの関係

慶應義塾大学の研究によれば、オフィスワーカーにおいて、ネガティブ感情を引きずる傾向が強い人は、翌日の作業効率が約12%低下するというデータが示されています。研究者は「嫌なことが起きても引きずらずに切り替えが早い人ほど、生産性だけでなくメンタルヘルスも良好」と結論付けています。
出典:慶應義塾大学 研究情報 https://www.keio.ac.jp

嫌なことを気にしないための具体的な方法

ここでは、嫌なことがあっても気にしすぎないために、すぐに実践できるヒントを紹介します。

  1. 【マインドフルネスや深呼吸】
    嫌なことをぐるぐる考える「ルミネーション」を断ち切るには、マインドフルネス瞑想や深呼吸が効果的とする研究が多数あります。ペンシルベニア大学の実験では、1日10分の瞑想を4週間続けたグループが、ルミネーション傾向を約15%低減したと報告。気になるときほど呼吸に集中し、「今ここ」に意識を戻す習慣を作ってみましょう。

  2. 【ポジティブ日記をつける】
    その日にあった嫌なことだけでなく、良かったことや感謝したいことも書き留める「ポジティブ日記」は、アメリカ心理学会も推奨する方法の一つ。寝る前に3つのポジティブな出来事を書き出すだけでも、自己肯定感が高まり、嫌なことに引きずられにくくなるというデータがあります。

  3. 【時間を区切る「イヤなことタイム」】
    どうしても考え込むときは、あえて1日10分だけ「イヤなことタイム」を設けて集中して悩む方法も有効。時間が来たら切り上げるルールを徹底し、他の時間帯には嫌なことを考えないよう心がけることで、思考のコントロール感を高められます。

  4. 【身体を動かす】
    京都大学慶應義塾大学の研究でも、軽い運動やストレッチがストレスホルモンの抑制に役立つと示されています。嫌なことをくよくよ考えてしまうときこそ、子どもと外で遊ぶ、散歩に出かける、ヨガや軽い筋トレをするなど、身体を動かす習慣を持つと、頭の中のモヤモヤがクリアになるケースが多いです。

  5. 【他人と共有する】
    嫌なことを一人で抱え込むと悪循環が加速しがち。信頼できる友人や家族、専門家に話をすることで、客観的な視点を得て楽になれる場合があります。特に子育てや仕事で孤立しやすい方は、「こんなことがあって嫌だったんだけど…」と気軽に話せる相手を見つけると、意外と解決策や新たな見方が出てくるものです。

まとめ

'''嫌なことを気にしすぎるとメンタルが疲弊し、生産性や日常の幸福感が下がってしまう。しかし、海外や日本の研究でも、ちょっとした思考や行動の工夫で、嫌なことにとらわれず前向きになれる可能性が示唆されている。'''

  • Penn Stateの研究: 嫌なことを翌日まで引きずる人はコルチゾールが約20%増加
  • APA: ルミネーションがうつ症状や不安障害と関連する事例を多数報告
  • 京都大学の育児ストレス調査: 嫌なことを気にしない人は育児ストレス平均4.8、気にする人は7.2
  • 慶應義塾大学: ネガティブを引きずりがちな人は作業効率が約12%低下

親としても、子どもがちょっと悪さをしてしまったり思わぬ言動をとったときに「どうしてこんなことするんだろう…」と落ち込む経験は多いですよね。でも、そのマイナス感情をいつまでも抱えていると、子どもともギクシャクしてしまいかねません。そこで、深呼吸や「今日はここが良かった」と書き出すといったアプローチを試してみると、驚くほど気分が軽くなるんですよ。
実際、僕自身は「嫌なことタイム」を10分だけ決めて、その間は思い切り考え込むけれど、それ以外の時間は子どもと笑顔で過ごすように意識しています。すると、子どもが「パパ、なんか今日は機嫌がいいね」と言ってくれることもあるんですよね。ちょっとした工夫で、意外と毎日が楽しく回るものだなと実感しています。

大切なのは、「嫌なことがあっても自分を責めすぎず、必要以上に引きずらない」考え方を身につけること。研究が示すように、そのスキルを身につけるだけでストレスホルモンを抑え、自己肯定感や意欲を維持できる可能性が高まります。どうか、自分を苦しめるぐるぐる思考から早めに抜け出し、前向きな毎日を送るきっかけをつかんでほしい。それがポジティブを伝えたい僕の、切なる願いです。