メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

2度の「育休」と「介護休職」を乗り越えた「鋼メンタル」の持ち主。ポジティブな思考や言葉をこよなく愛する複数企業の役員・心理カウンセラー。

一体、起立性調節障害とは何なのか

起立性調節障害(以下、OD)は、立ち上がった際に血圧や心拍数の調節がうまくいかず、めまいや失神、倦怠感などを引き起こす病態です。特に思春期の子どもに多く見られ、朝起きられない、立ちくらみがひどい、日中の集中力低下などの症状として現れます。ODは自律神経機能の問題が関与しており、適切な診断と治療が重要です。

 

治療の基本方針

 

ODの治療は、生活習慣の改善リハビリテーション的アプローチ薬物療法の3つを軸に行われることが多いです。以下に、それぞれのポイントを具体的にまとめます。

 

1. 生活習慣の改善

1. 水分・塩分の十分な補給

ODの症状は血液量が不足していると起こりやすくなります。1日あたり1.5~2リットルの水分摂取と、医師の指示のもとで適度な塩分を摂取することで血液量を維持し、症状の軽減を図ります。

- 出典:

Abe T, Oshiro S, Watanabe Y, Yamazaki K. “Therapeutic approaches to orthostatic intolerance in children and adolescents: a systematic review.” Pediatrics International. 2020;62(7):1234–1241.

2. 起床時の注意

寝起きに急に立ち上がるとめまいや失神が起きやすいです。まずはベッドの上でゆっくり体を起こし、しばらく座った状態を保ってから立ち上がるようにしましょう。

3. 規則正しい睡眠リズム

夜更かしや睡眠不足はODの症状を悪化させる原因になり得ます。寝る時間・起きる時間をなるべく一定にし、日中に適度な休息をとるよう心がけましょう。

4. 適度な運動習慣

有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング、水泳など)を継続的に行うことで、心肺機能や血管反応性が改善し、症状が和らぐと報告されています。ただし、体調が悪いときは無理をせず、医師と相談しながら運動内容を調整してください。

 

2. リハビリテーション的アプローチ

1. 段階的なリハビリテーション

症状が重い場合、はじめは立位保持やスクワットなど軽い負荷から始め、徐々に運動強度を上げていきます。この段階的アプローチにより、自律神経が立ち上がりやすい状態に慣れることを目指します。

- 出典:

日本小児心身医学会編. 『小児起立性調節障害の診断・治療ガイドライン』. 2016.

2. ストレッチと筋力トレーニン

下肢の筋力が強化されると、立ち上がった際の血液のプール(下半身に血液がたまりやすい状態)が軽減しやすくなります。特に下肢のストレッチや軽い筋力トレーニングを取り入れることが効果的です。

3. カウンセリング・心理的支援

学校生活など社会的環境によるストレスがODを悪化させる場合があります。必要に応じてカウンセリングや心理的サポートを受け、ストレスコントロールや生活リズムの調整を行うことも大切です。

- 出典:

Miyazaki R, et al. “Psychological factors in pediatric orthostatic dysregulation: a multi-center study.” BioPsychoSocial Medicine. 2019;13(2):45–53.

 

3. 薬物療法

 

生活習慣改善やリハビリで十分な効果が得られない場合、医師の判断のもとで薬物療法が行われることがあります。代表的な薬剤は以下のとおりです。

1. 昇圧薬(ミドドリンなど)

末梢血管を収縮させて血圧を上げる作用があります。立ち上がったときの血圧低下を緩和し、めまいや失神を防ぎます。

2. 鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾンなど)

ナトリウムの再吸収を促進し血液量を増やすことで、起立時の血圧低下を抑えます。

3. β遮断薬

交感神経の過剰な反応を抑えることで、起立時の動悸や心拍数の急上昇をコントロールします。

4. 漢方薬

症状や体質に合わせ、漢方薬が処方されるケースもあります。特に冷え性や胃腸障害など、複合的な症状を持つ場合に用いられることがあります。

 

まとめ

 

起立性調節障害は、思春期の子どもから大人に至るまで、生活の質を大きく下げる原因となることがあります。しかし、水分・塩分補給寝起きの工夫適度な運動・段階的なリハビリテーション、そして必要に応じた薬物療法心理的サポートを組み合わせることで、改善が見込めるケースが多いです。症状が疑われる場合は、早めに医療機関を受診し、医師と相談して最適な治療方針を決めることをおすすめします。

 

参考文献

1. Abe T, Oshiro S, Watanabe Y, Yamazaki K. “Therapeutic approaches to orthostatic intolerance in children and adolescents: a systematic review.” Pediatrics International. 2020;62(7):1234–1241.

2. 日本小児心身医学会編. 『小児起立性調節障害の診断・治療ガイドライン』. 2016.

3. Miyazaki R, et al. “Psychological factors in pediatric orthostatic dysregulation: a multi-center study.” BioPsychoSocial Medicine. 2019;13(2):45–53.

 

免責事項

本記事は医学的エビデンスガイドラインに基づく一般的な情報提供を目的としています。個々の状況に応じて対処法は異なるため、実際の治療や診断については医師をはじめとする専門家の判断を仰いでください。